A01-7-18
研究室ホームページ http://www.keio-urology.jp/
近年、同一腫瘍内における異なったトランスクリプトームをもつサブクローンの混在(腫瘍内不均一性, Intra-tumor Teterogeneity, ITH)が、癌根治を妨げる治療耐性化の原因として注目されております。今回我々は、膀胱癌の臨床像・治療軸に沿ったITH 変化を、最新のシングルセルRNA シークエンス・ライトシート顕微鏡を用いて1 細胞、3 次元の観点から解明し、難治性膀胱癌の新規治療軸を確立したいと考えております。
具体的には、シングルセルRNA シークエンスを通じて1)膀胱局所への免疫治療:ハイリスク表在性(早期)膀胱癌におけるBacille de Calmette et Guérin (BCG)膀胱内注入療法、2)転移病巣への集学的治療:遠隔転移に対する化学療法・分子標的治療において、癌多様性の克服する1細胞レベルの新しい分子基盤を構築したいと考えております。そして得られるシークエンス結果は、革新的なライトシート顕微鏡により立体的に可視化し、治療耐性を促すサブクローンが生息するニッチ構造を3 次元で明らかにしたいと考えております。
我々の提唱する1)単一細胞化された癌トランスクリプトーム、2)立体視される腫瘍内ニッチは、「癌幹細胞を含むポリクローナルな細胞集団がいかに治療耐性を獲得するか」を解き明かす分子基盤と考えます。将来的には、膀胱癌の新規治療として、標的細胞(治療耐性を促すサブクローン)への候補薬剤をスクリーニングし、動物モデルで検証を予定しております。また、基礎研究の成果は、ヒト腫瘍を用いた組織染色で結果の妥当性を臨床的に判断したいと考えております。