A01-5-16
研究室ホームページ http://www.genome.tokushima-u.ac.jp/dgm/
癌は主にゲノム・エピゲノム異常の蓄積によって発生、進展します。最近の癌ゲノムシーケンス解析の推進により、癌の発生・進展に重要な「ドライバー遺伝子」の同定やその多様性と進化の包括的解釈が進み、より正確な癌進展機構が解明されてきています。一方、そのうち、癌抑制遺伝子に関しては、その全てがドライバー変異やエピゲノム異常によって機能喪失しているわけではなく、一方、様々な発癌関連ストレスによって活性化されることも報告されています。しかしながら、このように癌抑制遺伝子が活性化されて、その抑制機能を発揮することは、癌細胞の悪性形質獲得・進展に極めて不都合であり、癌抑制遺伝子やその産物に対する新たな抑制機能喪失の機構の存在を意味します。我々は、この抑制因子の機能喪失機構の1つとして、自ら同定した乳癌発現亢進機能分子BIG3がプロテインホスファターゼの調節サブユニットとして機能し、体細胞変異もメチル化も認められない抑制因子PHB2を脱リン酸化することで、その抑制機能を喪失する新たな不活化機構を明らかにした。本研究では、この考えに基づき、プロテインホスファターゼとBIG3複合体による癌抑制因子の不活化を含む「新たな乳癌の多段階発癌機構の統合的解明と抑制因子を利用した創薬」を目指します。