A01-9-18
研究室ホームページ http://hygiene.med.hokudai.ac.jp/
本研究では、がんの発生を人口レベルで定量的に捉えた予測モデルを構築し、予測しやすい癌を選定して、中短期予測の実装に取り組むことを目指します。がんの中でも多因子によって生じるものは、生活習慣やゲノム情報など個体レベルのデータを活用してリスク要因を詳細に特定した上でテーラーメイドの予測を実施することが必要かもしれませんが、明確な暴露に引き続いて起こる癌は集団レベルの暴露と癌登録データのみでも大まかな予測が可能です。特に、喫煙と強い因果関係を要する場合や、必ず癌原性病原体の感染に引き続いて発がんする場合は、それら暴露に引き続く発がん過程のメカニズムを数理モデルによって記述することが可能です。数理的定式化とそのシステムの定量化が成し遂げられると、疫学的な癌予測と除菌療法・抗ウイルス療法・禁煙対策などの評価体系も人口レベルで抜本的に改善できるものと期待されます。また、癌検診の人口レベルでの計画にも貢献することができるでしょう。研究対象としてモデル化を検討するものは、肺がん、子宮頸がん、胃がんと肝がんの4つに絞り、限られた期間と資金の中で今後の研究発展を期すことができるよう、論文化を徹底して予測基盤を確固たるものにするよう工夫しています。予測の実装においては状態空間モデルとベイズ推定を利用しますが、従来的な粒子フィルタを用いたデータ同化に加えて、深層学習を利用したニューラルネットワークによる予測も検討する予定です。機械学習を活用した新しい疫学モデルの予測体系を構築することを目指します。