A01-8-16
研究室ホームページ http://www.nishizukalab.org/
抗癌剤治療後再発は、癌関連死のうち最も多い死因の一つです。多くの癌はコンベンショナルな細胞傷害性抗癌剤を主とした治療後に再発し、それに対応した細胞生存に繋がる分子シグナルが活性化することが知られています。本研究では、抗癌剤治療後癌再発をシステムとして理解し、再発癌に対する至適分子標的薬を選定する一連のプロセスの体系化を目指します。再発に関連するシグナル伝達を選択的に阻害できれば再発癌抑制に効果であると考えられますが、実際には複雑なシグナル伝達が誘導されており再発癌細胞集団は多様性に富んでいます。私達は抗癌剤治療後再発癌のモデルとして、ヒト胃癌細胞の抗癌剤接触後に生存可能な細胞集団(Drug Tolerant Colonies, DTCs)に焦点を当ててきました。DTCを用いた先行研究では、シスプラチン投与後のRNA polymerase II、および5-FU投与後の活性化PI3KをそれぞれDTCに対する治療標的として同定しました。この一連のプロセスは、独自に開発した逆相タンパクアレイ(RPPA)を用いて得られた、タンパクレベルでの高次元データ(時間・薬剤濃度に対応するデータ)やDTCを個別にプロファイルするユニークな解析法を用いています。さらに、in vivoでの検証にはヒトでの薬剤投与経路を忠実に再現した異種同組織移植転移モデルを開発しました。このような抗癌剤治療後再発癌に対する基礎的データの集積は、癌に対する初期治療が充実しつつある我が国にあって、今後極めて重要になっていくと考えられています。